お役立ちコラム

ロマンス詐欺被害者が弁護士に相談する前に準備すべきこと/弁護士が解説
ロマンス詐欺
相談前に準備すること

「弁護士に相談したいけれど、何を準備すればいいの?」

その疑問にお答えします

ロマンス詐欺の被害に気づき、「弁護士に相談しよう」と決心したとき…

多くの方が「何を準備すればいいのか」「どう説明すればいいのか」と戸惑います。

適切な準備をしておくことで、弁護士相談がスムーズに進み、より正確なアドバイスを受けることができます。

また、証拠を適切に保全しておくことで、お金を取り戻せる可能性が大きく高まります。

この記事では、債権回収・詐欺事件を多く扱う弁護士の視点から、相談前に準備すべきこと、集めるべき証拠、やってはいけないNG行動を詳しく解説します。

監修:弁護士 福世 健一郎
弁護士法人M.L.T法律事務所代表 / 保有資格:弁護士(千葉県弁護士会所属)


年間200件以上の法律相談実績を持ち、法律の専門知識と豊富な経験に基づいたアドバイスや案件処理を提供しています。「ご依頼者様第一主義」の理念のもと、特に「密なコミュニケーション」を重視した対応を心がけています。千葉津田沼を拠点とする地域密着型の弁護士法人の代表として、地域の皆様の法的問題解決に尽力しています。

監修:弁護士 福世 健一郎
弁護士法人M.L.T法律事務所代表 / 保有資格:弁護士(千葉県弁護士会所属)

年間200件以上の法律相談実績を持ち、法律の専門知識と豊富な経験に基づいたアドバイスや案件処理を提供しています。「ご依頼者様第一主義」の理念のもと、特に「密なコミュニケーション」を重視した対応を心がけています。千葉津田沼を拠点とする地域密着型の弁護士法人の代表として、地域の皆様の法的問題解決に尽力しています。

なぜ事前準備が重要なのか?

事前準備が重要な理由

理由①:限られた相談時間を有効活用できる

初回相談は通常30分〜1時間です。事前に情報を整理しておくことで、状況説明に時間を取られず、具体的な解決策の相談に時間を使えます。

理由②:弁護士が正確な判断を下せる

断片的な情報では、弁護士も正確な法的判断ができません。証拠が揃っていれば、回収可能性や取るべき手段を明確にアドバイスできます。

理由③:証拠保全のタイミングを逃さない

相手がアカウントを削除したり、連絡を絶ったりする前に証拠を保全することが重要です。後から「あのとき保存しておけば…」と後悔しないために、今すぐ行動しましょう。

【第1段階】今すぐやるべき5つのこと

今すぐやるべき5つのこと

弁護士に相談する前に、まず以下の5つを実行してください。これらは時間との勝負です。

1.追加送金を即座に停止する

最優先事項です。相手から「最後のお願い」「これで本当に返せる」「今日中に必要」などと言われても、絶対に追加で送金しないでください。

理由:
  • 被害額が増えるだけで、回収はさらに困難になります
  • 相手は「この人はまだ騙せる」と判断し、要求をエスカレートさせます
  • 弁護士や警察が介入する前に、証拠を隠滅される可能性があります
断り方の例:
  • 「今は経済的に余裕がない」
  • 「家族に相談したら反対された」
  • 「しばらく考えさせてほしい」

感情的にならず、冷静に断ってください。相手を刺激して証拠を消されることを避けるためです。

2.すべての証拠を保全する(削除される前に)

相手がアカウントを削除したり、メッセージを消したりする前に、今すぐすべての証拠を保存してください。

保存すべき証拠:
・LINEやメールのやり取りすべてのメッセージをスクリーンショット
・SNSのプロフィールプロフィール写真、自己紹介文、投稿内容
・通話記録電話番号、通話日時、通話時間
・銀行振込の記録振込明細、通帳のコピー、ネットバンキングのスクリーンショット
・写真や動画相手から送られてきた写真、一緒に撮った写真
・音声データ通話を録音している場合、そのデータ
保存方法:
  • スクリーンショットを撮る(スマホの画面をそのまま保存)
  • 複数の場所に保存(スマホ、PC、クラウドストレージ)
  • 日付と時刻が分かる形で保存
重要

証拠は「後で整理すればいい」と思わず、今すぐ、とにかくすべて保存してください。多すぎて困ることはありません。

3.相手の情報を整理する

現時点で分かっている相手の情報を、すべて書き出してください。

整理すべき情報:
・氏名本名(自称)、源氏名、ニックネーム
・連絡先電話番号、メールアドレス、LINEアカウント
・SNSアカウントX(Twitter)、Instagram、Facebook、マッチングアプリのID
・住所自宅住所(聞いている場合)、勤務先住所
・勤務先会社名、店舗名、業種
・銀行口座振込先の銀行名、支店名、口座番号、口座名義
・その他年齢、出身地、学歴、職歴、家族構成など

「分からない」項目があっても問題ありません。弁護士は、わずかな情報(電話番号や銀行口座だけ)からでも身元を特定できる場合があります。

4.時系列表を作成する

いつ、何があったのかを時系列で整理してください。これがあると、弁護士が状況を正確に把握できます。

時系列表の項目:
・日付◯年◯月◯日
・出来事出会った、初めて金銭を要求された、◯万円を振り込んだ、など
・金額(金銭の授受があった場合)
・メモ振相手が言った理由、自分の気持ちなど

作成例:

日付出来事金額メモ
2024年1月10日マッチングアプリで知り合うプロフィールに「海外在住」と記載
2024年2月15日毎日LINEでやり取り開始「運命の人」と言われる
2024年3月5日初めて金銭を要求される30万円「母親の手術費用が必要」と相談
2024年3月6日◯◯銀行に振込30万円「来月返す」と約束
2024年4月10日追加で要求される50万円「追加の治療費が必要」
2024年4月11日◯◯銀行に振込50万円「これで最後」と言われる
2024年5月1日返済期日だが連絡なしLINEの既読スルーが続く
2024年5月10日アカウントが削除されるLINEがブロックされた

5.相手との連絡を慎重に続ける

相手に「疑っている」「弁護士に相談した」と気づかれないようにしてください。

なぜ慎重に連絡を続けるべきか:

  • 急に連絡を絶つと、相手が警戒して証拠を消す可能性がある
  • 相手からの新しいメッセージが、証拠として重要になる場合がある
  • 弁護士や警察が介入するまで、相手を泳がせておく方が有利

連絡を続ける際の注意点:

  • 感情的にならない(「騙したでしょ!」「詐欺師!」などと言わない)
  • 追加の金銭要求には応じない(理由をつけて断る)
  • 「返済はいつ?」と穏やかに確認する(相手の返答が証拠になる)
  • 通話を録音する(相手の同意がなくても、自分が当事者なら合法)
例外

相手から脅迫や嫌がらせを受けている場合は、すぐに連絡を絶ち、警察に相談してください。

【第2段階】弁護士相談に持参すべき証拠リスト

証拠リスト

以下の証拠を整理して、弁護士相談に持参してください。すべて揃っていなくても構いませんが、多いほど有利です。

カテゴリー①:相手とのやり取りの記録

重要度:★★★(最重要)
LINEやメールのやり取り・すべてのメッセージのスクリーンショット
・特に重要:「返す」「借りる」「貸してほしい」などの文言が含まれるメッセージ
・日付と時刻が分かる形で保存
通話記録・電話番号、通話日時、通話時間の履歴
・録音がある場合、その音声データ
SNSのやり取り・DMやコメントのスクリーンショット
・相手のプロフィールページ全体
弁護士の視点:

「返すね」「給料が入ったら返す」「借りた」などの文言があれば、「貸金である」ことを立証できます。相手が「贈与だった」と主張しても、これらの証拠で覆せます。

カテゴリー②:金銭授受の記録

重要度:★★★(最重要)
銀行振込の記録・振込明細書(紙またはスクリーンショット)
・通帳のコピー(振込日、金額、振込先が分かるページ)
・ネットバンキングの取引履歴画面
現金手渡しの場合・領収書(あれば)
・手渡した日時と場所のメモ
・第三者の証言(一緒にいた人がいれば)
借用書・相手が書いた借用書(手書きでも有効)
・簡単なメモでも可(「◯月◯日に◯万円借りました」と書いてあれば十分)
弁護士の視点:

振込の際、摘要欄に「貸付金」「返済金」などと記載していれば、非常に強力な証拠になります。現金手渡しの場合、証拠が少ないため、LINEなどのやり取りがより重要になります。

カテゴリー③:相手の身元情報

重要度:★★★(最重要)
相手のプロフィール情報・SNSのプロフィールページ全体(氏名、写真、自己紹介文)
・マッチングアプリのプロフィール画面
相手の連絡先・電話番号
・メールアドレス
・LINEアカウント(LINE ID、表示名)
・SNSアカウント名(X、Instagram、Facebookなど)
相手の住所・勤務先・自宅住所(聞いている場合)
・勤務先の会社名・店舗名
・勤務先の住所や電話番号
振込先の銀行口座情報・銀行名、支店名
・口座番号
・口座名義(カタカナ表記)
弁護士の視点:

相手の本名や住所が分からなくても、電話番号や銀行口座があれば、弁護士会照会制度で身元を特定できる可能性があります。わずかな情報でも諦めず、すべて提供してください。

カテゴリー④:相手の言動を示す証拠

重要度:★★★(最重要)
相手から送られてきた写真や動画・プロフィール写真
・本人の写真(自撮り、ビデオ通話のスクリーンショット)
・「病院にいる」「事業をしている」などを示す写真
相手のSNS投稿・相手の日常投稿のスクリーンショット
・他の人とのやり取り(公開されている範囲で)
第三者とのやり取り・相手について友人や家族と相談したLINEなど
・他の被害者がいる場合、その連絡先や情報
弁護士の視点:

Google画像検索で相手の写真を調べると、別人のSNSがヒットする場合があります(写真盗用の証拠)。また、「海外にいる」と言いながら位置情報が国内、などの矛盾も重要な証拠になります。

カテゴリー⑤:その他の関連資料

重要度:★★★(最重要)
察への相談記録・相談日時、対応した警察官の所属・氏名
・相談内容と警察からの回答
・被害届や受理番号(提出している場合)
消費生活センターへの相談記録・相談日時と内容
・センターからのアドバイス
その他の関連書類・マッチングアプリの利用規約や契約書
・相手から受け取った名刺や書類(あれば)

【第3段階】やってはいけないNG行動

NG行動

弁護士に相談する前に、以下の行動は絶対に避けてください。状況を悪化させたり、法的に不利になったりする可能性があります。

NG行動①:証拠を改ざん・削除する

やってはいけないこと:
  • LINEのメッセージを編集・削除する
  • 都合の悪い部分を隠して証拠を提出する
  • 振込記録を書き換える
なぜダメか:

証拠の改ざんは犯罪です。また、後から改ざんが発覚すると、あなたの主張全体の信用性が失われます。都合の悪い証拠でも、すべて正直に弁護士に提出してください。

NG行動②:相手に脅迫的な連絡をする

やってはいけないこと:
  • 「警察に行くぞ」「晒すぞ」と脅す
  • 「◯日以内に返さないと◯◯する」と脅迫する
  • 相手の家族や職場に危害を加えると脅す
なぜダメか:

脅迫罪(刑法第222条)に該当し、あなたが逮捕される可能性があります。また、相手が「脅されて返すと言わされた」と主張し、あなたの立場が不利になります。

NG行動③:SNSで相手を晒す

やってはいけないこと:
  • 相手の本名、写真、連絡先をSNSで公開する
  • 「この人は詐欺師です」と拡散する
  • 相手の勤務先や家族の情報を公開する
なぜダメか:

名誉毀損罪(刑法第230条)やプライバシー侵害に該当し、逆にあなたが訴えられる可能性があります。また、相手が証拠を隠滅して逃げるきっかけになります。

NG行動④:自力で取り立てる

やってはいけないこと:
  • 相手の自宅や職場に押しかける
  • 相手の家族や友人に「代わりに払え」と要求する
  • 相手の勤務先に電話して「金を返せ」と騒ぐ
なぜダメか:

恐喝罪、強要罪、業務妨害罪などに該当する可能性があります。また、相手が「恐怖を感じた」として接近禁止命令を申し立て、あなたが不利になります。

NG行動⑤:第三者に無断で情報を共有する

やってはいけないこと:
  • 相手の個人情報を無関係な第三者に教える
  • SNSで「◯◯さんに騙された」と実名を出す
  • 相手の顔写真を勝手に公開する
なぜダメか:

プライバシー侵害や名誉毀損に該当します。情報を共有する場合は、弁護士、警察、信頼できる家族・友人に限定してください。

NG行動⑥:感情的に相手を問い詰める

やってはいけないこと:
  • 「騙したでしょ!」「詐欺師!」と感情的に問い詰める
  • 長時間電話で責め立てる
  • 相手の言い訳を全て否定して追い込む
なぜダメか:

相手が警戒して証拠を消したり、連絡を絶ったりします。また、相手が「精神的に追い詰められた」と主張し、あなたが不利になる可能性があります。

正しい対応:

冷静に「返済はいつですか?」と事務的に確認し、相手の返答を記録する。感情を抑え、証拠を集めることを優先してください。

まとめ:準備をしっかりして、一歩を踏み出しましょう

準備をしっかりしましょう

ロマンス詐欺の被害に遭ったとき、「どうすればいいか分からない」「恥ずかしくて相談できない」と一人で抱え込んでしまう方が多くいます。

しかし、適切な準備をして弁護士に相談すれば、お金を取り戻せる可能性は十分にあります

今すぐやるべきこと(再確認):
  • 追加送金を停止する
  • すべての証拠を保全する
  • 相手の情報を整理する
  • 時系列表を作成する
  • 相手との連絡を慎重に続ける

これらの準備ができたら、勇気を持って弁護士に相談してください。

あなたは一人ではありません。騙されたあなたが悪いのではなく、あなたの信頼を悪用した相手が悪いのです。